ファーストキスはレモン味
いつものように応接室に入ったら雲雀さんが口をもごもごさせながら作業していた。
不思議に思って質問してみたら、雲雀さんは、ふわ、と顔をあげた。
「アメ。」
もごっ、と一言だけ。
ああー、アメね。
雲雀さんにしては珍しい。
「喉でも痛いの?」
更に聞きながらソファに座ってデスクの彼を見る。
「別に。なんとなく舐めたくなったから草壁に買わせてきただけだよ。
・・・もいる?」
雲雀さんはくいっと少し首を傾ける。
・・・なんか小さい子みたい。
「いるー。」
笑みを零しながらデスクに近づく。
雲雀さんはその間に、引き出しをガラッと開けてアメを出していた。
デスクの前に立つと、はい、と言って手にアメを2,3個乗せて差し出した雲雀さん。
全部持っていっていいかな。
「ありがとー」
アメを受け取る。
そして封を開けて口に入れながらまたソファに戻る。
ソファに座る頃には、口の中にレモンの味が広まっていた。
ソファの前のテーブルには、私が前来たまま・・・書類が書きかけのまま置いてあった。
うー・・・やるか。
もごもごとアメを口の中で弄りながら手を動かす。
数枚終わったところで、もう飽きてきた。
「雲雀さーん」
手は一応動かし続けながら、視線も書類に向けたままの状態で話しかける。
「なに?」
雲雀さんも書類か何かを書いているのだろう、紙とペンが擦れ合う音がする。
紙とペンが擦れ合う音をBGMに話を続ける。
「雲雀さん、レモン好きなの?」
口の中のレモンを感じながら問う。
と、きょとん、とした声で返ってきた。
「なんで?」
その声が可愛らしくて、ふ、と笑みを浮かべながら答えた。
「レモンのアメばっかりが入ってるやつ買ってこさせたみたいだから」
さっき、雲雀さんが引き出しを開けたときに一瞬みえた。
レモンのイラストのパッケージ。
ビタミンがどうとかも書いてあったなー。
「さあね。でも嫌いじゃないよ。
じゃあ僕からもに質問」
嫌いじゃないのか・・・・じゃあ今度レモンでも買ってきてみようかな。
質問・・・雲雀さん別に質問しなくても全部わかってそうだけどなー。
よし、また1枚終了ー。
「んー?」
気の抜けたような返事をしたけど、雲雀さんは構わずに問うた。
「の中のファーストキスの味のイメージは?」
雲雀さんらしくない質問に思わず固まる。
雲雀さんの口からファーストキスという単語がでるなんて・・・!!
・・・ファーストキスの味かー・・・。
なんかよく言うよね。
えーと・・・ファーストキスは・・・
「レモン味、だっけか」
んー、と天井を仰ぐ。
と、何故か雲雀さんの声がさっきより近くから聴こえた。
「だよね。だからレモン味のアメ。」
後ろから。
え、と思って後ろを振り向いた瞬間、
ふわっ
と唇に感触、目の前には雲雀さんの顔と黒い綺麗な髪。
そしてレモンの味が更に濃くなる。
・・・え?
・・・・・・・・キ、キス・・・・?
私が固まってる間に雲雀さんの顔が遠ざかる。
「ひ、雲雀、さん?」
顔がだんだん熱くなっていく。
・・・あー・・・今真っ赤かな・・・・。
「たしかってこれがファーストキスだよね?
僕もだけど。」
ふわりと笑う雲雀さん。
また子供っぽくなった。
・・・・って
「なんで雲雀さんがそんなこと知ってるの!!??」
いや、確かにそうだけどさ。
・・・ファーストキス、レモン味になっちゃったけどさ。
雲雀さんは私の叫びに楽しそうに笑った。
「並盛中学風紀委員長だからだよ」
2007/09/02