ちゃん、誰かにチョコあげないの?」

「へ?あ、長太郎」








青春真っ最中!  ヴァレンタイン編











登校中に話しかけてくるなんて珍しいなー。

あ、皆さんお早う御座います。
氷帝学園二年男子テニス部マネージャー、今日も元気に登校中です。

長太郎の一言でやっと気づきました。

「今日バレンタインか」

乙女の大事な1日を忘れていました。
女の子として大丈夫でしょうか、私。
恋する乙女として大丈夫でしょうか、私。

と、そんなことはどうでもよくて。

教えてくれて有難う、長太郎!

でも少し、どきどきします!
だってそりゃ好きな人にそんなこと聞かれたら・・・

ちゃん?」

「あ、ごめん。考え事してた・・・。
えと、チョコ、だよね」

長太郎の一言で現実に戻ってこれました。
そして私は話を続けます。

「女友達にはあげるけど、男の子にはあげない、かな。」

ほんとは目の前の想いを寄せる人にあげたいのですが、相手は男子テニス部レギュラー。
渡せるわけがないのです。

でも長太郎は驚いたように言うのです。

「跡部さん達にはあげないの?」

んー

「皆に配ろうかと思ったんだけど、その為にマネージャーやってる、て思われたら嫌だし、」

そこで一旦言葉を切ると、長太郎は促すように私の顔を覗き込みます。

「マネージャーってだけで目ェ付けられてるのに、チョコ渡しでもしたらいじめられちゃうから」

自嘲。

それに、一番の理由はこれなのです。
長太郎のことを名前で呼び始めたときも嫌がらせされましたからね。
すると長太郎は、主人の手を噛んでしまった犬のように、しゅんとしてしまいました。

あ、前向いてるから気配だけですがね。
そして、なにを言うかと思えば

「あの・・・ごめんね」

いきなり謝られてしまいました。
吃驚して長太郎の方を勢いよく向いてしまいました。

「へ!?」

「俺達が迷惑かけちゃってるみたいだから…」

ぶはっ!!
なんでこんなに真面目なんですか!?この子は!!

「なるべく気を付けるから、困ったらすぐ言って?」

そしてなんでこんなに優しいんですか!?
…そういうところに惹かれたんだけどね。

「長太郎は悪くないよ!モテるのは良いことだし。だから、謝らないで?長太郎。」

慌ててフォローします。
長太郎は少し驚きながらも瞳を輝かせ、微笑みました。

「ありがとう」

ずきゅーん。
あまりの可愛さに顔を逸らしてしまいました。

い、犬みたいでめちゃめちゃ可愛い…。
と、悶えていると長太郎から質問が。

「ところで今日、バレンタイン以外で何の日かわかる?」

はい!!わかります!!

「長太郎の誕生日!」

Vサインをして長太郎の方を向く。
へへへへへー。
長太郎の誕生日は調査済みなのです!!
にかーっと笑っていると、長太郎は少し照れたように微笑みました。

「覚えててくれたんだ」

く、くはぁう!!
・・・い、いけない・・・。
悶えてる場合じゃないぞ、私。

せめてお祝いの言葉くらい言うんだ!
というわけで逸らしていた顔をまた長太郎に向けます。

そして、出来る限りのスマイルで

「誕生日おめでと!長太郎」

するとどうでしょう。
あたりまえですが私以上のスマイルで
「ありがとう」

くっ・・・ふっ・・・・。

耐えろ!耐えるのだ、私!
絶えるんじゃないよ!!

と、必死に耐え、あることに気づいて謝罪します。

「あ、ごめんね。プレゼント・・・あげたいんだけど・・・」

「ううん、いいよ。祝ってくれただけで、十分だから」

くほはっっっっ!!!
な、なんていい子なのでしょう!?
なんだか私が悪い子みたい!

でも、長太郎はそういってくれましたがやっぱり私は満足ではないのです。
チョコか、プレゼント。どちらかでいいから渡したいのです。

でも私は馬鹿なので自分では判断できず、思わず聞いてしまいました。

「ちょ、長太郎って、もらえるとしたらチョコとプレゼントどっちが欲しい?」

馬鹿だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
私は馬鹿です!
なんてこと言ったんだろっ!!!!

ですが、長太郎は普通に返してくれます。

「どっちかっていうと、誕生日祝ってもらったほうが嬉しいかな」

つまりはプレゼントなんだね!!!???

なんだか思考がオーバーヒートです!
でも私は馬鹿なのでプレゼントと決め付けます!
そして私は馬鹿なので数ヶ月前からプレゼントを買っていました!
そして私は馬鹿なので今、それが鞄の中にあります!
そして私は馬鹿なのでそれを渡せ・・・・・・たらいいのになぁ・・・。

と一気にクールダウン。
一人でなんやかんややっているうちに、もうすぐ校門です。

もう数歩、というところで長太郎が立ち止まりました。
私もつられて足が止まります。

「どしたの?長太郎?」

聞くと、長太郎の顔が何故か赤くなりました。

そして暗闇から明るい外へ踏み出す一歩のように、決心したような声で言います。

「俺、ちゃんのこと、いじめから守れる自信…あるから」

「・・・・へ?」

思考がストップ。
まさに頭が真っ白です。

数秒後、やっと私の脳は働き始めました。
さて、さきほどの長太郎の言葉を思い出します。

かああああっと顔が熱くなりました。
ええっと、それは・・・・・
そういうことで・・・・。

渡しちゃって、いいんです、よ、ね?
もう私は馬鹿なので渡してしまいます!

そっと鞄に手を入れ、目の前の人へ渡すものをつかみ、それを狭い空間から外に出してやりました。
そして、前に差し出します。

「った、誕生日・・・・おめでとう」

声が、くぐもってしまいました。

「うん・・・ありがとう」

私に合わせるように長太郎の声もくぐもっています。
そして2人で顔を見合わせ、何故か頬が緩みました。

「ずっと、ちゃんのこと、好きだったんだよ」

今後、私たちがどうなったかは・・・・・・・わかりますよねっ?











2007/02/14