「ねーねー早くいこーよー」











常識:病室では静かにしましょう









「まだジャッカルきてないからもうちょっと待ってろぃ」

ブン太の腕をぐいぐい引っ張りながら言うと、呆れた目で返された。
なにやってんだよジャッカルめ!

本日12月25日!
皆さんご存知クリスマスでござい。
私たちは我らが部長、幸村様の入院している病院でささやかなクリスマスパーティをするのです。
病院だからほんと、ささやかに。
病院に行くにはバスに乗る必要があるのでレギュラー陣とバス停前で待ち合わせしてたんですが、ジャッカルがこない!
待ち合わせ時間は当の昔に過ぎてるのに!

「あいつは部長への愛が足りない!」

「わけわかんないこと言ってるッスね、先輩。」

「じゃのぅ。つかなんじゃ、幸村への愛って。はそんなに幸村が好きなんか?」

拳を握り締めていると、後ろで赤也がぼやき、仁王が私に問うてくる。
何をいまさらわかりきったことを。
振り返って笑顔で答える。

「大好き!」
ふんわりとした蒼い髪、柔らかな物腰、そしてあの笑顔っ・・・!


突然、仁王が後ろから首に腕を絡めてきた。
え、ちょ、苦しい。


「妬けるのぅ」

「わっ、ちょっ、やめっ!」

ぴったりと身体をくっつけられる。
温かい・・・けど!けど!

「仁王ぅぅぅぅ・・・!!!」

「ずりぃ!オレもっ!」

「ぐふっ」

なんでそこでブン太までくっ付いてくるかなぁ。

「んじゃオレもっー」

「ぶへっ」

そんでもってなんでついでみたいに赤也もくっ付いてくるかなぁ。
温かいけどさ、苦しいんだよね。
あと周りの視線が痛いんだよね。

あ、ほら、真田なんて今にも怒り出しそう。

「たっ・・・たるんどる・・・!!」

「弦一郎、クリスマスくらいはしゃがせてやれ」

「そうですよ。」

柳生と柳が抑えてるけど。
いや、もう鉄拳飛ばしちゃってもいいからどかしてくれ、これ。

と、そこにちょうどジャッカル登場

「悪ぃ!・・・・って何やってんだ、お前等・・・」

ぽかーんとした顔で私たちを見つめるジャッカル。
何やってんだ、って言われても、ねぇ。
・・・ってそれより!

「お前は部長への愛が足りない!」

びしぃっと3人に潰されながらもジャッカルに人差し指を向ける。
と更にジャッカルの顔が間抜け面になった。


そこにまた都合よくバスが来た。

「ほら、3人とも離れなさい。バスが来ましたよ」

柳生の一言で重みはなくなったけど寒い風がコート越しに、または直接肌に突き刺さる。
でもこんなの部長への愛で吹き飛ばせる!

「れっつごーっ!」





*




「精市、起きてるか」
「ぶちょおっんぐっ・・・!!」

「此処病院だろぃ」

真田が開けたところに叫びながら飛び込もうとしたらブン太に口を塞がれつつ止められた。
ごめんなさい、すっかり忘れてました。
私が黙ると、ブン太は手を離してくれた。

「あは、すまん、ありがとう。」

は世話が焼けるぜぃ」

うるせっ、と吐き捨てて柔らかく・・・黒く微笑んでいた部長のもとへ小走りに向かった。

ベッドの横まで行って、笑いかける。

「部長、メリークリスマス」

さっきとはうってかわって真っ白な笑みを私に向け、答えてくれた。

「来てくれてうれしいよ、。メリークリスマス」

嬉しくてどんどん頬が緩んでいく。

「えへへー・・・」


後ろで皆の呆れたような溜め息が聞こえた後、皆部長の周りに集まった。

「調子はどうだ?精市」

真田が聞くと、視線を私の後ろの移して部長はまた笑いかけた。

「みんなが来てくれたおかげで大分いいよ。も来てくれたし」

そしてまた視線を私に戻すと、頭に手を乗せられた。
・・・ム・・・

「部長、私同い年」

むっとして言うと、柔らかく返された。

「俺に頭撫でられるのが嫌?」

「なっ!そういうわけじゃなくって・・・!」

「じゃあ良いよね」

「うぅ・・・・」


私と部長がそんな会話を繰り広げていたら・・・


「幸村の呪いを返す方法は・・・・」
「帰りに甘えてやるぜぃ・・・!!」
「ああ゙!?」

物騒なことが聞こえてきたよ・・・・。
つか赤也が悪魔化寸前なんですけど。

どう対処すべきか考えていると部長が楽しそうに言った。


「ねぇ、学校でのこと、いろいろ教えてくれないかい?」

「え、あ、うん、いいよ」




*



楽しそうにと会話を交わす幸村を妬ましげに見つめるものが数名。

「あの人たち絶対オレ等のこと忘れてるッスよね」

「俺のなのに・・・」

「呪い返しでも覚えて突撃、の手もあるのぅ」

「いくら精市でもたるんどるッ・・・!!」

『えっ、真田も!?』

赤也、ブン太、仁王が呟く中、自然と真田も文句を漏らした。
真田の文句には流石の柳生も驚いた。
・・・柳は無反応だが。

が、みなやがて1つの考えに辿り着いた。



真田が父親でが娘。



そしてコクコク、とうなずく。
それに真田が不審げな目を向けた。

「何だ?」

『なんでもありません』

ナイスハモリ。


そこでまた柳生の一声。

「ほら、あの幸せ空間を打ち破る為にパーティーを始めましょう」

「え・・・あの・・・じぇんとるめん?」

「はい?」



こいつも黒か!!


その場の全員がツッコんだ。

でもまぁ柳生の言葉もわからなくはないのでさっそく始めることにしたらしい6人。



*



「はいはいはいストーップ。そこまで」

ちょうど話のキリがついたところでブン太が割って入ってきた。
それと同時に部長の眉間に皺が寄った。
・・・キヅカナイフリキヅカナイフリ。

「ブン太、始めるの?」

「おう!!」

私が聞くと満面の笑みでブン太が答える。
ブン太は嬉しそうな顔のまま私の腕をぐい、と引っ張った。

はこっち!」

「わわっ!?」


振り返って部長を見ると、部長らしくないしゅん、とした顔をしていた。
がそれも一瞬だけ。
すぐにいつもの黒い笑顔に戻った。

・・・見慣れないものは見るもんじゃないわ。
・・・頭から離れないじゃんか・・・。
・・・部長・・・・・・・・・


?」

「おわっ!?」

ブン太の声で現実に引き戻された。
驚きの声をあげた所為でブン太が不思議そうに見てきた。

「あは・・なんでもないなんでもない。
 んで?パーティー始めるんでしょ?」

「おう」


ちらりと離れてしまった部長の顔を見てみる。
と、相手も私を見ていたようで。
目が合うと一瞬驚いたような顔をしたけどすぐに、やれやれ、的な顔になった。
私も釣られて苦笑する。

そこでさっきの部長の顔がフラッシュバック。

・・・いや、もう何なんだよ私。



今度は真田の渋い声で現実に戻された。

「皆様、お手を拝借・・・」
『宴会ィィィィィィィ!!??』

皆で一斉にツッコみ、赤也が手を挙げて発言。

「副部長、クリスマスなんスからぱぁーっと明るくいきましょーよ!」

よっし、気分切り替え!

「はいはーい!じゃあ私が!・・・コホン・・・」



『かんぱーい!!!!!!!』


「なんで皆言うのォォォォォ!!!???」

叫びながら皆の顔を見渡すと真田以外みんなニヤニヤしてたよ・・・。

ふとまた部長のところで目が止まった。
部長は私の視線に気づいたらしく、目を合わせると楽しそうに笑った。
あのしゅんとした顔を忘れてしまいそうなほどその笑顔が私の瞳に焼きついた。
・・・やっぱ部長は笑顔じゃないとね・・・!!
黒いのは勘弁だけど。


「皆ァ、盛り上がっていこーぜぇぇぇぇぇ!!」

『おう!!!!』



「別室の患者さんの迷惑になるので叫ばないで下さい!」

がらっと扉を開けて看護婦さんが入ってきて叫んだ。
・・・すっかり忘れてた・・・。

『す、すみません・・・』

それを聞いて看護婦さんはふん、と鼻をならして扉を閉めた。

コツコツコツ・・・足音が聞こえなくなるまで何故かみんな黙ってた。
そして足音が消えた瞬間、皆一斉に吹き出した。

それがまた面白くて、また皆一斉に笑い出した。
怒られない程度の声の大きさで。
真田や柳まで笑ってるのはもう奇跡としか言いようがない。





部長だけじゃない。
皆、やっぱ笑顔がいいね。

・・・・あ、でも真田が四六時中笑顔だと困るなぁ・・・。

まぁいいや。
メリークリスマス。





2007/12/26